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面積・角・長さ(続き)

先週は、面積について学びました。今週は曲線の長さ、および 交わる2曲線のなす角の大きさについて学びます。

D は uv 平面の中の領域とし、 p : D → R3 は ある曲面のパラメータ表示であるとします。

この曲面の上の曲線 qq(t) ( a ≦t≦b )を考えます。 D はこの曲面の「地図」に相当しますから、この曲線上の点 q(t)は D の中の点と対応していますので、その点を (u(t), v(t)) と表すことにします。これにより D の中の曲線 r(t)=(u(t), v(t)) ( a ≦t≦b )が得られます。つまり q(t) = p(u(t), v(t)) という関係になっています。

さて、q は、曲面 p を忘れると、3次元空間内の 普通の曲線ですから、その長さは

    ∫ab | q(t) | dt

で表すことができます。 これを u(t), v(t) を使って表してみましょう。

合成関数の微分の公式(連鎖律)により

    q(t) = (d/dt) (p(u(t), v(t))) = pu u(t) + pv v(t)

となります。したがって

    | q(t) |2 = (pu u(t) + pv v(t))・ (pu u(t) + pv v(t)) = E u(t)2 + 2 F u(t) v(t) + G v(t)2

という関係が得られ、これを用いて、曲線qの長さは

    ∫ab √{E u(t)2 + 2 F u(t) v(t) + G v(t)2}dt

という風に、第一基本量を使って表現することがわかりました。 つまり、3次元空間の中で考えずに、「地図」D の上に書かれた曲線 (u(t), v(t)) と、D の上で定義された3つの量 E(u,v), F(u,v), G(u,v) で、 この曲線の長さが求まるということです。 もう少し丁寧に書くと、次のようになります。書きにくいのでuv平面に おける曲線(u(t), v(t))の接ベクトル(u(t), v(t)) を(α, β)と書きます。すると上のルートの中の式は
         ┌   ┐┌ ┐
    [α β]│E F││α│      (*)
         │F G││β│
         └   ┘└ ┘
という2次形式です。 Dの各点において、接ベクトル[α β],[γ δ]の新しい「内積」 [α β]*[γ δ]を
                     ┌   ┐┌ ┐
    [α β]*[γ δ]=[α β]│E F││γ│
                     │F G││δ│
                     └   ┘└ ┘
で定めることにすれば、上の(*)は、[α β]*[α β]と書けます。 これを、新しい「内積」*に関するベクトル[α β]の「大きさ」 ‖[α β]‖の2乗と解釈すれば、曲線qの長さは

    ∫abr(t) ‖ dt

で表されることになります。 *や‖・‖が不自然に感じられるかもしれませんが、 「地図」の上では、ベクトルやベクトルのなす角の大きさが正確に 表せているわけではないので、実際の大きさを表すように補正したものだと 解釈してください。


次に、曲面p(u,v) 上の2曲線 q1(t), q2(t) がある1点で交わっているとしましょう。 必要ならばパラメータをとりなおすことによって、その交点は q1(t0) = q2(t0) であるとしましょう。 この2曲線のなす角θを、それぞれの速度ベクトルのなす角として定義します。 さらに、この2曲線が地図 D 上の2曲線

    r1=(u1(t), v1(t)),     r2=(u2(t), v2(t))

で表されているとします。これらを用いると、2曲線 q1, q2の時刻 t における速度ベクトルは、それぞれ

    pu(u1(t),v1(t)) u1(t) + pv(u1(t),v1(t)) v1(t)

    pu(u2(t),v2(t)) u2(t) + pv(u2(t),v2(t)) v2(t)

とかけるので、cos θは

     E(u0, v0), F(u0, v0), G(u0, v0), u1(t0), v1(t0), u2(t0), v2(t0)

を用いて書くことができます(入力が面倒なので式は省略)。 ただし、(u0, v0) は交点に対応する地図 D 上の点 (u1(t0), v1(t0)) = (u2(t0), v2(t0)) のことです。 上で導入した新しい「内積」*と「大きさ」‖・‖を用いると、 次のように簡潔に表すことができます:

    cos θ=r1(t0) *r2(t0)/ (‖r1(t0)‖ ‖r2(t0)‖)


演習



●双曲線のパラメータ表示

曲面の上の「面積」「長さ」「角度」の概念は、uv平面の領域において、 第一基本量 E, F, G がわかれば、すべて求まることを学びました。 つまり、空間の中の「形」をしらなくても、E, F, G のみを知ることにより、 その曲面の「幾何」が調べられるのです。この考えを、やや極端に押し進めて、 次のような「曲面」を考えてみます:

uv平面のすべてにおいて、

    E = -1, F = 0, G = 1

という「第一基本量」が与えられているとしましょう。 この上の曲線 (u(t), v(t)) を次式で定めます:

    u(t)=cosh(t), v(t)=sinh(t)

これは双曲線 x2-y2 = 1 の右側の部分になります。 この曲線の接ベクトルは

    (u(t), v(t)) = (sinh(t), cosh(t))

ですから、その「大きさ」を E, F, G を使って計算すると

    ‖(u(t), v(t))‖ = √(-sinh2(t) + cosh2(t))= 1

となります。つまり上の (u(t), v(t)) は速さ1の等速運動を表しており、 パラメータ t は点 (u(0), v(0))=(1,0) を基準とした弧長パラメータです。 その意味で、このパラメータは、単位円 x2 + y2 = 1 のパラメータ表示 (cos(t), sin(t)) のパラメータ t が、点(1,0)を基準とした 弧長であることと非常に綺麗に対応しています。

●平面曲線を回転してえられる曲面のパラメータ表示

xz平面の x>0 の部分にある曲線q(u)=(x(u), z(u)) (a≦u≦b)をz軸のまわりに1回転すると、 曲面が得られます。 ひとつのパラメータはuをそのまま使い、もうひとつの パラメータとして、x軸の正の向きを基準としたz軸の回りの回転角 v(球面の場合は、「経度」に対応するもの)を用いることにすると、 この回転図形のパラメータ表示は

    (x(u)cos(v), x(u)sin(v), z(u))   (a≦u≦b, 0≦v≦2π)

となります。