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曲面の曲率

3次元空間内の曲面に対して「曲率」の概念を導入します。

曲面のパラメータ表示 p=p(u,v) が与えられているとします。 曲面上の一点Pを考えます。この点における単位法線ベクトル ν をPを始点とするベクトルと考え、このベクトルを含むような 平面Πをとります。この平面Πの上にPを原点とする座標軸をとります。 y軸はνの向きに取ります。このy軸は、空間のx軸、y軸、z軸とは 全く無関係です。Πのx軸は、y軸に直交するように、ふつうに取ります。 Πをどちらから見るかによって、二通りの取り方がありえますが、とりあえず、 どちらでもかまいません。この平面Πの上に、曲面と交わってできる曲線 qΠが描かれます。 qΠは原点でx軸に接しています。 qΠの向きは、原点における速度ベクトルが右向き(x軸の正の向き)に なるように決めます。これで、この曲線qΠの原点における (平面曲線としての)曲率を考えることができます。 この曲率の値は、Πを裏側から見てx軸を取って考えても、同じになります。 さて、Πをνの周りに一周回転すると、それにともなって 曲線qΠの原点における曲率も色々変わるでしょう (もちろん一定な場合もあります)。180度の回転で元に戻りますので、 これは最大値と最小値を持ちます。最大値をλ1, 最小値をλ2とします。

定義:λ1とλ2主曲率といいます。また、

   K = λ1λ2

を、ガウス曲率といいます。



以前、第一基本量 E, F, G を次のように定めました:

   E = pupu
   F = pupv
   G = pvpv

今回新たに、第二基本量 L, M, N を次のように定めます:

   L = puuν = - puνu
   M = puvν = pvuν = - puνv = - pvνu
   N = pvvν = - pvνv

公式:
   K = (LN-M2)/(EG-F2)



Kの計算例:x2+y2+z2=r2 (半径 r の球面)

方法1:定義に基づいて、νを含む平面で切ってできる曲線を考えると、 それは半径 r の円周になり、曲率は 1/r (または - 1/r)です。 平面を回転してもその値は一定ですから、K = λ1λ2 = 1/(r2) となります。

方法2:パラメータ表示として

   p=(rcos u cos v, rcos u sin v, rsin u)

(-π/2<u<π/2、-π<v≦π)を考えます。 上の公式の通りに計算すれば、同じ結果になるはずです。

以前平面における閉曲線の曲率を積分したものを2πで割ると「回転数」という整数が 得られることを観察しました。空間内の「閉」曲面 S においても
   (1/2π)∬SK dA
がS の「オイラー標数」と呼ばれるある整数値になることが知られています。 「オイラー標数」については後期の幾何学IIで学びます。 興味のある方はぜひ受講してください。

また曲面 S の中の「三角形」ΔABCの内角の和に関する興味深い公式が 教科書に載っています:
    ∠A+∠B+∠C = π + ∬△ABC K dA
球面の場合に色々な「三角形」を考えて、上の式が成り立つことを観察しましょう。