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幾何学II

ワード表示の変形 (2)

変形の基本

  1. 文字を取り替える。
    1. a → x, a-1 → x-1
    2. a → x-1, a-1 → x
  2. 巡回的に文字の並び方を変える:AB ←→ BA
  3. 隣り合う a と a-1 を取り去る。またその逆: A a a-1 B ←→ AB ←→ A a-1 a B
    ただし、AB は「空」ではないとする。
  4. Aa BC a-1 D ←→ A a' CB a'-1 D
    aB=a' とおいて、その両辺に、形式的に右から B-1 をかけると、 a=a'B-1という式が得られます。 さらに両辺の逆をとると、a-1=B a'-1 が得られます。 これにより Aa BC a-1 D から a を消去するとA a' CB a'-1 D が得られます。この変形は実際に、aB という辺の集まりの端点を結ぶ線分(a')に 沿って多辺形を分割し、a で貼り合わせることと対応しています。 逆方向の変形も同様です。また a と a-1 の位置が入れ替わっている場合も 同様な変形が可能です。
  5. AB-1aaC ←→ Aa'Ba'C ←→ Aa"a"B-1C
    a'=B-1a とおいて、両辺に左から B をかけると a=Ba' が得られます。 これをAB-1aaC に代入して a を消去すると、Aa'Ba'Cが得られます。 これも実際に多辺形を、縁の B-1a の部分の端点を結ぶ線分 a' で分割し、 a で貼り合わせることに対応しています。他の変形も同様です。
  6. 全体の逆をとる: A ←→ A-1
    これは多辺形を裏返すことに対応しています。

便利な技:aba-1b-1 や cc のような「基本部品」は ワード内の任意の場所に移動できます:

  1. A B aba-1b-1 C ←→ A aba-1b-1 B C
  2. A B cc C ←→ A cc B C

事実: 一般に X = X' (同相)、Y = Y' (同相)ならば X # Y = X' # Y' が成り立ちます。 したがって、X のワード表示 A が A' に変形され、Y のワード表示 B が B' に変形され、 かつ A, A' に現れる文字と B, B' に現れる文字に重複がないならば、AB を A'B' に 変形してもよいことになります。このことを使うと変形が簡単になることがしばしばあります。

これらを使って、与えられたワード表示を「標準形」にする方法を解説しようとしましたが、 時間が来たので、次回続けます。




幾何学演習II

単体の向き

n 単体 |v0v1……vn| は、頂点を並べ替えても 同じ図形を表します。頂点の並び方に意味を持たせるときは、 <v0v1……vn>という記号を用いることにします。 例えば、<a b>と<b a>は違ったものを表すと考えます。ただ、 順番が違えばみな違うというわけではありません。並べ替えるその仕方が、 「偶置換」になっているときは「同じ」、 「奇置換」になっているときは「逆」と考えます。 例えば<a b c>と<b c a> の場合、その並べ替え方は

   a  b  c
   \\/
    ×\
   / ||
   a  b  c
のようになっていて、同じ頂点を結ぶ曲線たちが2カ所で交わりますので、 偶置換になります。したがって、<a b c>=<c b a> です。

<a b c>=−<b a c> となります。

小テスト:<a b c d e >と<b c e d a> は同じか? 逆か?

Kが複体とします。そのi単体がσ1, ……, σmとするとき、
   Ci(K;R)={r1σ1+……+rmσm | rj は実数 }
と定めます。これは、σ1, ……, σm を基底とする線形空間です。

次回は、線形写像
   ∂:Ci(K;R)→Ci-1(K;R)
を定義します。