[目次]

集合(続き)


集合(続き)

今回は前回やり残した「和集合」「共通部分」「空集合」「補集合」について学びます。


命題に関する記号と集合に関する記号の区別をすることが大切です。
例えば ∪ と ∨、∩ と ∧ の違いはよく理解していますか?


演習

B4の解説:
「任意の実数xに対し、自然数 n で n>x をみたすものが存在する。」

このようなややこしい命題は、まずその中に含まれる小さな命題や命題関数を見つけて分析しましょう。 今の場合は「自然数 n で n>x をみたすものが存在する。」の部分がひとつの命題関数になっています。これを式で表すことを試みます:

    ∃n(n>x)

これはやや不正確ですね。n が自然数であるという条件が抜けています。それを補うと 次のようになります:

    ∃n((nは自然数である) ∧ (n>x))

これは x を変数とする命題関数です。それを D(x) と書きましょう。するともとの命題は 「任意の実数 x に対し、D(x) が成りたつ」となりますから、次のように書けます:

    ∀x ( x は実数である ⇒ D(x) )

つまり、

    ∀x ( x は実数である ⇒ ∃n((nは自然数である) ∧ (n>x)) )

となります。命題関数 A(x), B(n), C(n,x) を

    A(x) = x は実数である
    B(n) = n は自然数である
    C(n,x) = n > x

とおくと、

    ∀x ( A(x) ⇒ ∃n( B(n) ∧ C(n,x) ) )

と書くことができます。



この命題は真ですが、練習のため、この否定を作りましょう:

    ¬(∀x ( A(x) ⇒ ∃n( B(n) ∧ C(n,x) ) ))
   ≡¬(∀x ( A(x) ⇒ D(x) ))
   ≡∃x (¬( A(x) ⇒ D(x) ))  否定を中に入れた
   ≡∃x ( A(x) ∧ ¬D(x) )  前回の公式の6……覚えましょう!
   ≡∃x ( A(x) ∧ ¬(∃n( B(n) ∧ C(n,x) )) )
   ≡∃x ( A(x) ∧ ∀n(¬( B(n) ∧ C(n,x) )) )  否定を中に入れた
   ≡∃x ( A(x) ∧ ∀n((¬B(n)) ∨ (¬C(n,x)) ) )  否定を分配した
   ≡∃x ( A(x) ∧ ∀n( B(n) ⇒ ¬C(n,x) ) )  前回の公式の2

もちろん、これは偽な命題ですが、これを普通のことばで表してみましょう。 まず、前半だけ翻訳すれば、

    ある実数 x に対して、∀n( B(n) ⇒ ¬C(n,x) )が成立する

または

    ∀n( B(n) ⇒ ¬C(n,x) )が成立するような実数 x が存在する

となります。 残った部分も無理矢理ことばになおしてみましょう:

    任意の自然数 n に対して n>x が成りたたないような実数 x が存在する

または、n も x も実数であることを考慮して、

    任意の自然数 n に対して n≦x が成立するような実数 x が存在する

のように変形することができます。 または、上のような変形を最後までしないで、公式6を適用した段階で普通の言葉にすると、

    ある実数 x に対しては、n>x を満たすような自然数 n は存在しない

または

    n>x を満たすような自然数 n が存在しないような実数 x が存在する

と表現することもできます。皆さんは、どれが好みでしょうか。


GWの宿題


上ののようなことを、以下の命題6”および6’、さらにプリントのA6に対して調べなさい。

命題6”: 次を満たすような自然数Nが存在する: x>Nであるようなすべての実数 x に対して (1/2)x< 1 が成りたつ。

命題6’: 任意の正の数εに対して、次を満たすような自然数Nが存在する: x>Nであるようなすべての実数 x に対して (1/2)x< ε が成りたつ。

命題6: 0 < a < 1 であるならば、任意の正の数εに対して、次を満たすような自然数Nが存在する: x>Nであるようなすべての実数 x に対して ax< ε が成りたつ。


6”は明らかに真な命題ですが、他の命題も真であることがわかります。