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まず、前前回のレポート問題の解説を行いました。

問題
ユークリッド直線(R, d)の部分集合 A を考える。A から出発して、 内部・閉包を交互にとることを考える:
   A -> Ai -> Aia -> Aiai -> Aiaia -> Aiaiai -> ……
先に閉包をとってから、同様に繰り返すこともできる:
   A -> Aa -> Aai -> Aaia -> Aaiai -> Aaiaia -> ……
例えば、A=(0,1] とすると、次のように繰り返しが起こる:
   A=(0,1] -> Ai=(0,1) -> Aia=[0,1] -> Aiai=(0,1) -> Aiaia=[0,1] -> Aiaiai=(0,1) -> ……
   A=(0,1] -> Aa=[0,1] -> Aai=(0,1) -> Aaia=[0,1] -> Aaiai=(0,1) -> Aaiaia=[0,1] -> ……
したがって、このようにして得られる部分集合は、Aも含めて3つしかない。 A をうまく選んで、もっと多くの異なる部分集合がえられるようにしなさい。

まず、どんなにうまく選んでも高々7つの異なる集合しか得られないことに注意します。 次の公式に注目します:   Aia = Aiaia、   Aai = Aaiai

Aia = Aiaiaの証明:
Aia ⊂ Aiaia かつ Aia ⊃ Aiaia を示す。
まず
   Ai ⊂ Aia
が成り立っていることに注意する。 両辺の内部をとっても包含関係は変わらないので
   Aii ⊂ Aiai
が成り立つが、Aii=Ai であるから、
   Ai ⊂ Aiai
となる。この両辺の閉包をとると
   Aia ⊂ Aiaia
が得られる。
同様にして、    Aia ⊃ Aiai
 ⇒ Aiaa ⊃ Aiaia
 ⇒ Aia ⊃ Aiaia
となる。よって証明された。

Aai = Aaiai も同様にして証明できるので、 各自やってみてください。

さて、レポート問題の解答ですが、例えば A = {0}∪(1,2)∪(2,3)∪{4以上5以下の有理数} としてみると、
   A -> Ai=(1,2)∪(2,3) -> Aia=[1,3] -> Aiai=(1,3) -> Aiaia=[1,3] -> ……
   A -> Aa={0}∪[1,3]∪[4,5] -> Aai=(1,3)∪(4,5) -> Aaia=[1,3]∪[4,5] -> Aaiai=(1,3)∪(4,5) -> ……
のように7つの異なる集合が得られます。



部分距離空間

定義: 距離空間 (Y,dY) の部分集合 X が与えられているとき、 X の上の距離関数 dX
   dX(x, x') = dY(x, x')    (x, x' ∈ X)
で定めることができる。このようにして得られる (X,dX) を (Y,dY) の部分距離空間という。

距離空間の完備性

定義: 距離空間 (X,d) の点列{an}が次の条件を満たすとき、コーシー列 または基本列という。
   ∀ε>0(∃N∈N(n, m ≧ N ⇒d(an, am)< ε))

収束する点列は必ずコーシー列です(証明は容易)。 実数列に関しては逆がなりたつこと、すなわち、数列がコーシー列であるならば、 ある実数に収束することがよく知られています。 この事実を、ユークリッド直線 (R, d) は完備であるというふうに表現します。

定義: 距離空間 (X,d) の任意のコーシー列が(X,d)において収束するとき、 (X,d) は完備であるという。

完備でない距離空間の例:
X=R−{0} とおき、ユークリッド直線の部分距離空間 (X,d) を考える。この距離空間は完備ではない。実際 {1/n} はこの空間の コーシー列であるが、この空間に極限をもたない。

例題: (Y,dY) は完備距離空間とする。 その部分距離空間 (X,dX) は、X が Y の閉集合であるとき、完備である。 証明せよ。

例題: (X,dX) は (Y,dY) の部分距離空間であるとする。 (X,dX) が完備であるならば、X は (Y,dY) の 閉集合であることを証明せよ。

(次回解説します)