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小テスト: 集合 X の上の関係〜が同値関係になるためにみたすべき3つの条件を書きなさい。


同値関係の続き

前回は「同値関係」について学びました。 その話を続けます。

集合Xの上の同値関係「〜」が与えられているとします。

問:次が成り立つことを示せ:

  1. x ∈ C(x)
  2. C(x) たちの和集合は X 全体
  3. x 〜 y ⇔ C(x) = C(y)
  4. x 〜 y でない ⇔ C(x) ∩ C(y) = φ

※ 上の2は正確には∪{ C(x) | x∈X }=X と書きます。 ここで{ C(x) | x∈X }は「集合を要素とする集合」になっています。 紛らわしいので、集合を要素とする集合のことを「集合族」と呼ぶことがあります。 今の場合 C(x) はいずれも X の部分集合ですので、 X の「部分集合族」ということもあります。
一般に集合 X のある部分集合たちの作る「部分集合族」F が あったときその和集合∪F
    ∪F ={ x ∈ X | ∃A∈F (x∈A) }
と定めます。F が添え字λを用いてF ={ Aλ | λ∈Λ } と表されているときは、∪λ∈ΛAλ とも表します。 共通部分 ∩F も同様に、
    ∩F ={ x ∈ X | ∀A∈F (x∈A) }
と定めます。

同値類 C(x) の全体はひとつの集合になります。 これを X/〜 と書きます:
    X/〜 ={ C(x) | x ∈ X }
この集合は X の〜による商集合と呼ばれます。 X の要素 x に対して C(x) を対応させることにより、 写像 p: X → X/〜 が定まります。 この写像 p は全射です。

問:p-1({C(x)}) = C(x) であることを示せ。

逆に全射 p: X → Z が与えられたとき、X の上の同値関係を
    x 〜 y ⇔ p(x)=p(y)
で定めることができます。しかも X/〜 と Z の間には自然な全単射が存在します。

試験範囲はここまでとします。


集合の濃度

ふたつの集合 X, Y が対等である(X 〜 Y)ということを、 X から Y への全単射が存在することと定めます。 これは同値関係の条件 E1, E2, E3 をみたします。 この同値関係による同値類 C(X) のことを、X の濃度といい、 |X| と書きます。

上の問でみたように、|X|=|Y| ⇔ X 〜 Y が成立します!

注:実は上の議論は問題があります。 同値関係というのはある集合の上に定まるものです。 「対等」は集合と集合の間の関係ですから、考える集合は 「すべての集合の集まり」のはずです。 ところが残念なことに「すべての集合の集まり」は集合ではないのです。 もし仮にすべての集合の集まり X が集合であるとしましょう。 すると X の定義から、X ∈ X となります。 X の要素を x と書くことにします。x はそれ自身集合です。 x ∈ x が成り立つか成り立たないかどちらかのはずです。 X の部分集合 Y を次のように定めます:
    Y ={ x ∈ X | x ∈ x が成り立たない }
X が集合ですから、その部分集合 Y も集合です。 このとき Y ∈ Y が成り立つでしょうか、それとも成り立たないでしょうか。

もし Y ∈ Y が成り立つならば、Y の定義から Y ∈ Y は成り立たなくなります。 もし Y ∈ Y が成り立たないならば、Y の定義から Y ∈ Y が成り立ちます。 いずれにしても矛盾が生じてしまいます。

これは X が集合であるとしたことが原因なのです。 したがって、X は通常の意味の集合ではありません。 実際のところ我々が考える集合はごくごく小さい集合から順序立てて 作られるような非常に限定された集合だけを扱いますので、 「すべての集合の集まり」などというものを考える必要はありません。 気になる人は「集合論」の本を読んでみてください。





演習

線形空間 V とその線形部分空間 W が与えられたとき、
     uvuv∈ W
により、同値関係が定まります。その証明を行いました。

さらにvの同値類 C(v) が部分集合
    v+ W={v+w | w ∈ W }
であることを観察しました。

V/〜を V/W と書きます。これが線形空間になることのチェックの仕方を学びました。 和やスカラー倍の定義が well-defined であることを確かめなければなりません。



集合の濃度

ふたつの集合 X, Y が対等である(X 〜 Y)ということを、 X から Y への全単射が存在することと定めます。 これは同値関係の条件 E1, E2, E3 をみたします。 この同値関係による同値類 C(X) のことを、X の濃度といい、 |X| と書きます。

上の問でみたように、|X|=|Y| ⇔ X 〜 Y が成立します!

注:実は上の議論は問題があります。 同値関係というのはある集合の上に定まるものです。 「対等」は集合と集合の間の関係ですから、考える集合は 「すべての集合の集まり」のはずです。 ところが残念なことに「すべての集合の集まり」は集合ではないのです。 もし仮にすべての集合の集まり X が集合であるとしましょう。 すると X の定義から、X ∈ X となります。 X の要素を x と書くことにします。x はそれ自身集合です。 x ∈ x が成り立つか成り立たないかどちらかのはずです。 X の部分集合 Y を次のように定めます:
    Y ={ x ∈ X | x ∈ x が成り立たない }
X が集合ですから、その部分集合 Y も集合です。 このとき Y ∈ Y が成り立つでしょうか、それとも成り立たないでしょうか。

もし Y ∈ Y が成り立つならば、Y の定義から Y ∈ Y は成り立たなくなります。 もし Y ∈ Y が成り立たないならば、Y の定義から Y ∈ Y が成り立ちます。 いずれにしても矛盾が生じてしまいます。

これは X が集合であるとしたことが原因なのです。 したがって、X は通常の意味の集合ではありません。 実際のところ我々が考える集合はごくごく小さい集合から順序立てて 作られるような非常に限定された集合だけを扱いますので、 「すべての集合の集まり」などというものを考える必要はありません。 気になる人は「集合論」の本を読んでみてください。