新宿梁山泊第22回公演「盲導犬」
[新宿梁山泊公演ちらし(表)
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[新宿梁山泊公演ちらし(裏)
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[櫻社公演(1973)ちらしmodoken73.gif (45KB)]
ロビーや舞台に新宿駅西口地下の浮浪者の段ボールの家が再現され、開演前から
役者たちが舞台で浮浪者や掃除のオバサン、通行人、女子高生などを演じる。
開演時間になると、浮浪者の一人が急に体をおこし、観客に携帯電話などの
スイッチを切っておくように告げる。そして、都の職員たちがあらわれ、
浮浪者たちを立ち退かせ、段ボールの家や家財道具を撤去する。そして、芝居が
始まる。
戯曲では、そして桜社による初演でも、幕開けは盲導犬学校の訓練生の登場である。
今回の舞台では、まず、一人の男が5、6人の男たちに追われる場面から始まる。
男は必死で逃げるが最後にはつかまってしまい、短刀で刺し殺される。同様の
ことがあと4回繰り返される。5人の男たちの死体がゾンビのように起き上がり
訓練生に変身する。この出だしはもちろん戯曲にはなかったものであるが、
芝居の最後の部分 -- 主人公たちが町内会の人々に殺されてしまう
場面 -- と呼応させたのだろう。この部分は緊迫感のある音響効果も
あって、なかなか迫力があった。
その他にもいくつか膨らませているところがあったせいだろうか、桜社
公演は1時間半ぐらいであったが、今回の公演は開演時間からはかっても、
2時間以上の長い芝居になっていた。
他方、桜社公演と比較して、より、戯曲に忠実なところもあった。桜社公演では
不服従の犬ファキイルは実際には姿を見せなかったと思うが、今回はぬいぐるみの
姿で舞台に現われた。このせいで、幕切れ近くヒロインの銀杏がファキイルに
のど笛をかみ切られるシーンが、よりわかりやすくなっている。しかし、その
半面ファキイルが矮小化された感が強い。その滑稽感もあって、ここが本来
一番盛り上がるはずのところだと思うのだが、高揚感がやや不足してしまった。
ファキイルも、本来客の頭を飛び越えて去らなければならないものが、何だか、
奥に引っ込んでしまったような感じだ。
主人公たちは、「良い人」たちに殺されてしまう(死後?、犬の胴輪さえ焼き切れば、
ファキイルの後を追って、「ダッタンを越え、ペルシャを越え、ナイルを逆のぼる」
ことができるのだが)。唐自身は当時右翼的傾向を示しており、本来の意図は
わからないが、これは当時(20数年前)の左翼運動の終焉に重ね合わす
ことができる。しかし、いくらなんでも、これでは古すぎるので、演出家は新宿西口の
浮浪者問題とむすびつけ、「良い人」たちに滅ぼされていく異端者の姿を
浮かび上がらせようとしたのだろう。
非常に熱気のあるよい舞台であった。ぼくの頭の中に緑魔子のイメージがあったので
最初違和感を覚えたが、見ているうちに石井ひとみの演じる銀杏に引き込まれて
行った。また、盲導犬学校の先生を演じた金守珍もはじめて見たが、唐十郎風の
演じ方で、面白かった。婦人警官サカリノは桃井かおりの健康的な婦警さんと
ちがってずいぶん色っぽく、楽しませてくれた。
挿入歌は初演のときのものと同じ曲(メロディ)を使っている。
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