[目次]

幾何学II

閉曲面の連結和

前回の続きで、多角形(=多辺形)の辺を2つずつ組にして貼り合わせたものが 閉曲面になることの証明を行いました。 重要なのは、貼り合わせ後の図形の頂点の状況です。元の図形が2n辺形ならば、 元々頂点は2n個あったわけですが、貼り合わせによりその個数が減る可能性があります。 その個数の求め方を説明し、各頂点のまわりに(1個以上の)扇形がきれいに 集まっていることを確認しました。ほかの点の近傍は容易に観察できます。

続いて、ふたつの閉曲面 X, Y の「連結和」X#Yの説明を行いました。 これは、それぞれから円板の内部を取り除き、ふち同士を貼り合わせたものです。 X または Y が連結でない場合には、円板の取り方によって、異なる図形が得られる場合が ありますが、ともに連結ならば、円板の取り方や、ふちのの貼り合わせの向きなどによらず、 X#Yが定義できることを、証明なしに述べました。 この議論をきちんとするには曲面の「向き」について考察する必要があります。 詳しくは昨年度の配布プリントを読んでください。

連結和の具体例として、P2#P2を考えてみます。 P2から円板の内部を取り除くとMB(メビウスの帯)ができることを 思い出しましょう。ふたつのMBのふちを貼り合わせたものが求める連結和です。 すでにふたつのMBをふちに沿って貼り合わせたものはKB(クラインの壺)であることを 観察しましたので、P2#P2=KBとなります。

次回は上の例や、さらには T2#P2= P2#P2#P2などについて学びます。




幾何学演習II

重心座標の計算(2)

前回、各頂点の座標が「きれい」な正三角形を作ってみなさい、という課題も出しました。 答えは、A(1,0,0), B(0,1,0), C(0,0,1) を頂点とする三角形です。 これ以上「きれい」な座標の正三角形はないでしょう。

上の正三角形の点P(x,y,z)の△ABCにおける重心座標を求めなさい。

解答:ベクトルの記号(→)が使えないので、点Xを始点、点Yを終点とするベクトルのことを (XY) と書くことにします。求める重心座標α, β, γは次の方程式を満たします:
   (OP)=α (OA)+β (OB)+ γ (OC)
これを成分で表すと、
   (x, y, z)=(α, β, γ)
となります。よって、答えは (x, y, z) です。元の座標と重心座標が一致します!


単体

点、線分、三角形はそれぞれ0次元、1次元、2次元の図形で、頂点の個数は 順に1個、2個、3個です。この「次」に来るのは4個の頂点を持つ3次元の図形・ 四面体です。これらの図形を「単体」と呼びます。点は0体、線分は1単体、 三角形は2単体、四面体は3単体と呼ばれます。一般のn単体を定義しました。

定義 ユークリッド空間RNの中の(n+1)個の点 v0, v1, v2, ……, vn が「一般の位置にある」とは、次のn個のベクトルが一次独立であることを言います:
    (v0v1), (v0v2), ……, (v0vn)

定義 v0, v1, v2, ……, vn が一般の位置にあるとき、これらの点を頂点とする「n単体」 <v0, v1, v2, ……, vn >とは 次の図形のことです:
<v0, v1, v2, ……, vn >= {t0 v0 + t1 v1 + …… + tn vn | t0 + t1 + …… + tn = 1, ti ≧ 0 }

(t0, t1, …… , tn)が点 t0 v0 + t1 v1 + …… + tn vnの「重心座標」です。


次回は単体の「頂点・辺・面」について学びます。




[おまけ]