[目次]
幾何学II
■セル複体
セル複体の概念を導入しました。 単体複体は単体の集まりですが、セル複体は 「セル」の集まりです。
「nセル」とは、n次元の閉円板と同相な図形のことです。例えば、
- 0セルは空間の点です。0単体と同じものです。
- 線分(1単体)は1セルです。
- 半円周のようにまがった曲線も1セルです。
- 三角形(2単体)は2セルです。
- n角形(n>0)も2セルです。
- 北半球のようなまがったものも2セルです。
「セル複体」X とは次のようにして作られる図形(とその作り方の情報)のことをいいます:
- 有限個の0セルを用意します。これを X(0) と書きます。
- 有限個の1セルの端点を X(0) に貼り付けて図形 X(1) を作ります。
このとき、ひとつの1セルの両端が同じ0セルに貼り付けられてもかまいません。
1セルは端点以外の点で0セルや1セル(自分自身や他のもの)にぶつかってはいけません。- 有限個の2セルのふちを X(1)に貼り付けて図形 X(2) を 作ります。。
ふちはつぶれたり、異なる点が同じところに貼り付けられてもかまいません。
2セルはふち以外の点で0セルや1セルや2セル(自分自身や他のもの) にぶつかってはいけません。- ……
- これを有限回続けます。
定義: 図形 X をセル複体と見る見方を決めることを X のセル分割といいます。
例: 閉曲面の2n辺形の辺の貼り合わせによる表示は、閉曲面のセル分割を与えます。 例えば下の図はトーラス T2 の、ひとつの0セル、2つの1セル(a と b)、 ひとつの2セルからなるセル分割を与えます:
幾何学演習II
■線形写像の核と像
最初に、基底の与えられた線形空間の間の線形写像が行列表示をもつことを復習しました。
V, W を線形空間とし、dim V = n, dim W = m としておきます。 また f:V → W を線形写像とします。
定義:
(1) Ker f ={ v ∈ V | f(v)=0 }:写像 f の核 (kernel)
(2) Im f ={ f(v) ∈ W | v ∈ V }:写像 f の像 (image)Ker f や Im f の次元を実際に計算するには、V と W の基底を固定し、 f を mxn 行列 A で表します。このとき、
dim Im f = rank(A) :行列 A の階数
となります。行列 A の階数を計算するには、行列の「行基本変形」を用います:
(1) ひとつの行にある実数をかけたものを別の行に加える。
(2) ひとつの行に0でない実数をかける。
(3) ふたつの行を入れ替える。
最後の操作は、実は上の2つの操作を組み合わせて得られるので、「基本度」は低いですが、 便利なので入れておきました。