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数の体系・実数の性質
■数の体系
具体的な集合の例として色々な数の集合について学びます。
- N=自然数全体の集合
- Z=整数全体の集合
- Q=有理数全体の集合
- R=実数全体の集合
これらには次のような包含関係があります。
N ⊂ Z ⊂ Q ⊂ R
■実数の性質
E はRの部分集合で、空集合ではないものとします。
また、 c は実数とします。
定義:c が E の上界であるとは、
∀x (x ∈ E ⇒ x ≦ c )
が成立することと定義します。
命題:c が E の上界ではない ⇔ ∃x (x ∈ E ∧ (x > c) )
※ ここでは関係ありませんが、一般に不等式が与えられた場合、暗黙の了解として
両辺とも実数値であると解釈します。
次のような略記法を用いることもあります:
- ∀x (x ∈ A ⇒ Q(x) ) のことを ∀x ∈ A ( Q(x) )
- ∃x (x ∈ E ∧ (x > c) ) のことを ∃x ∈ E ( Q(x) ) または ∃x ∈ E s.t. Q(x)
この書き方を用いると:
- c が E の上界である ⇔ ∀x ∈ A ( x ≦ c )
- c が E の上界ではない ⇔ ∃x ∈ E (x > c) )
となります。そのほかにも、誤解のおそれがない場合は、同様の略記法をどんどん使ってかまいません。
例:E = (1,2) 開区間 とします。
- 3 は E の上界です。
- 4 も E の上界です。
- 2 も E の上界です。
- 1.8 は E の上界ではありません。
- 0 も E の上界ではありません。
演習
- プリント#1のA6の解説をしました。
- プリント#1のB1,B2,B4,B5,B6,B8,B9がすみました。
前回の課題について:
以下の命題6”、6’、6を式で表しなさい。
またおのおのの否定を作りなさい。
- 命題6”:
- 次を満たすような自然数Nが存在する: x>Nであるようなすべての実数 x に対して
(1/2)x< 1 が成りたつ。
- 命題6’:
- 任意の正の数εに対して、次を満たすような自然数Nが存在する:
x>Nであるようなすべての実数 x に対して
(1/2)x< ε が成りたつ。
- 命題6:
- 0 < a < 1 であるならば、任意の正の数εに対して、次を満たすような自然数Nが存在する:
x>Nであるようなすべての実数 x に対して
ax< ε が成りたつ。
解答
6”:
∃N (N∈N ∧ ∀x( x>N ⇒ (1/2)x< 1 ))
6’:
∀ε(ε>0 ⇒
∃N (N∈N ∧ ∀x( x>N ⇒ (1/2)x< ε))
)
6:
∀a( 0<a<1 ⇒
∀ε(ε>0 ⇒
∃N (N∈N ∧ ∀x( x>N ⇒ ax< ε))
)
)
または連続する∀をまとめて
∀a,∀ε(0<a<1 ∧ε>0 ⇒
∃N (N∈N ∧ ∀x( x>N ⇒ ax< ε))
)
さらに、上で述べたように簡略化すると
6”:
∃N ∈N(∀x>N((1/2)x< 1 ))
6’:
∀ε>0(
∃N ∈N(∀x>N( (1/2)x< ε ))
)
6:
0<∀a<1(
∀ε>0(
∃N ∈N(∀x>N( (1/2)x< ε ))
)
)
または
0<∀a<1,∀ε>0(
∃N ∈N(∀x>N( (1/2)x< ε ))
)
否定に関しては省略します(タイプに疲れました)。
限定命題の否定の典型的なパターンはつぎのふたつであることを使って下さい:
- ¬(∀x(A(x) ⇒ B(x)))≡ ∃x(A(x) ∧ ¬B(x))
- ¬(∃x(A(x) ∧ C(x)))≡ ∀x(A(x) ⇒ ¬C(x))