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実数の性質(続き)
■実数の性質
全回に続いて、Rの空でない部分集合 E に対して、最大値 max E ・最小値 min E ・
上限 sup E・下限 inf E の定義と具体例の紹介を行いました。
- max E = E の要素の中で最も値の大きいもの
- min E = E の要素の中で最も値の小さいもの
- sup E = min{ c | c は E の上界 }
- inf E = max{ c | c は E の下界 }
E が上に有界ならば sup E が存在し、
E が下に有界ならば inf E が存在します。
これは、この授業では事実として認めることにします。
max E が存在すれば、それは自動的に sup E になっています。
また、min E が存在すれば、それは自動的に inf E になっています。
しかし、sup E が存在しても、必ずしも max E は存在するとは限りませんし、
inf E が存在しても、必ずしも min E が存在するとは限りません。
- sup E が存在し、sup E ∈ E ならば max E = sup E。
- sup E が存在し、sup E ∈ E でないならば max E は存在しない。
- inf E が存在し、inf E ∈ E ならば min E = inf E。
- inf E が存在し、inf E ∈ E でないならば min E は存在しない。
具体例:
- E として N を考えます。
- max N :存在しない
- min N = 1
- sup N :存在しない (つまり、N は上に有界でない!)
- inf N = 1
- E として { 1/n | n∈N} を考えます。
- max E = 1
- min E :存在しない
- sup E = 1
- inf E = 0
解説:
- sup N が存在しないこと、つまり N が上に有界でないこと:
直感的に明らかですが、次のような背理法による理詰めの議論も可能です。
上限 sup N が存在すると仮定しましょう。それを c と置きます。
c-1 は c より小さいので、N の上界ではありません。
従って、c-1 < n をみたすような自然数 n が存在します。この不等式の -1 を移項すると
c < n+1 となります。n が自然数ですから、当然 n+1 も自然数です。
従ってこの不等式は、c が N の上界ではないことを意味します。
これは c の取り方に矛盾します。よって、上限が存在しないことが結論できます。
- inf{ 1/n | n∈N}= 0 であること:
- 0 が E ={ 1/n | n∈N}の下界であること。
Eの要素は 1/n (nは自然数)の形をしているのですから、明らかに 0 < 1/n の不等式が
成りたちます。これは 0 が E の下界であることを意味します。
- 0 が E の最大な下界であること。
仮に 0 より大きい下界 c が存在したとします。定義より、
すべての自然数 n に対して、 c ≦ 1/n が成りたちます。
この不等式を n に関して解くと n ≦ 1/c となります。これは
1/c という実数が自然数全体の集合 N の上界であることを意味します。
これは N は上に有界でないという事実に反します。
したがって、上のような c は存在しません。
練習問題. inf {(1/2)n | n ∈ N }= 0 であることを証明しなさい。
演習