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小テスト:R2に離散距離を与える。 点列{xn}をxn=(1/n,1/n)で定める。 これはコーシー列であるか?
点列の収束 (3)
まず、次の定理の証明を行いました。
定理:点列{an}に関して次が成り立つ:
{an}は収束する ⇒ {an}はコーシー列である数直線に関しては逆が成り立ちます。これを、「実数の完備性」と呼びます。 一般に、ある距離空間 (X,d) において、コーシー列が必ず収束するとき、その 距離空間は「完備である」といいます。
完備でない距離空間の例としては、半開区間 X=(0,1] に d(x,y)=|x-y| という 距離関数を与えたものなどがあります。この空間は次の意味で数直線の 「部分距離空間」になっています。
定義+定理: 距離空間 (X,dX) の部分集合 A を考える。 d:A x A → R を d(a,a')=dX(a, a') で定める(a, a'∈ A)。 このとき (A,d) は距離空間となる。このようにしてつくられた (A,d) を (X,dX) の部分距離空間と呼ぶ。
完備な距離空間の例:
- ユークリッド空間 Rn は完備である。
- 完備な距離空間の「閉集合」は完備な部分距離空間となる。
ただし、「閉集合」とは次のように定められます。
定義: A を距離空間 (X,d) の部分集合とする。 点列{xn}が、xn∈A (すべての n )をみたし、 xn → x (∈ X )であるならば、 必ず x ∈ A であるとき、 A は (X,d) の閉集合という。一般に閉集合とは限らない部分集合 A があたえられたとき、(X,d) の点たちは 次の2種類に分かれます:
A の触点の全体を Aa と、肩に a をつけて表します。 次のことはすぐわかります:
- A の中の点列の極限になる (このとき、その点は A の「触点」であるという)
- A の中の点列の極限ではない (このとき、その点は A の「外点」であるという)
定理:
- A ⊂ Aa
- A = Aa ⇔ A は閉集合