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フォントの選択

●書体

前節で作成した文書は非常に寂しい印象を与えます。 その理由のひとつは文字の種類や大きさに変化がないことです。 以下アスキー版の日本語 TeX (PTeX)を前提に話を進めます。 標準的に使える日本語フォントは明朝体とゴシック体の2種類があります (インストールの仕方による)。 なにも指定しなければ明朝体が使われているはずです。 ゴシック体を使うときは \gt というコマンドを用います。 tex003a.tex(S-JIS) -- tex003a.dvi
これは明朝体で書かれています。

{\gt 今度はゴシック体です。}また明朝体に戻りました。
\gt またゴシックに \mc なったと思ったら明朝に戻りました。

\bye

注意するのは入力ファイル内の { }です。 かっこが出力されていないことに注意して下さい。 TeX ではこの { } は「グループ」をつくることに使われます。 例の最初の \gt のようにひとつのグループの中で使われたコマンドは 一般的にそのグループの中だけで有効になります。 何か操作を行なうときは、グループを作ってその中だけで臨時に行なうのが 安全です。 もちろん、2番目の \gt のように用いて、あとから \mc コマンドで明朝に戻すのでもかまいませんが……。

グループを閉じ忘れると tex にかけるときとんでもないエラーが出て来たりします。 よくやることなので気をつけましょう。 また、グループは何重にも入れ子にできます。

欧文フォントは日本語フォントと独立に設定できます。 標準でローマン体が使われます。 以下が、すぐに使えるフォントと対応するコマンドのリストです。

ローマン\rm
ボールドフェイス\bf
イタリック\it
スラント\sl
タイプライタータイプ\tt
tex003b.tex(S-JIS) -- tex003b.dvi
\gt{\bf boldface} や {\it italic} や {\sl slanted} や {\tt typewriter}など
が使えます。普通は {\rm roman} です。
\bye


●サイズ

欧文フォントは標準では10ポイントのものが使われます。 小さいサイズ(7ポイント・5ポイント)のローマンやボールドフェイスは \sevenrm, \fiverm, \sevenbf, \fivebf などを 用いて使うことができます。

tex003c.tex(S-JIS) -- tex003c.dvi
{\fiverm five point roman}, {\sevenrm seven point roman}, 
ten point roman

{\fivebf five point boldface}, {\sevenbf seven point boldface}, 
{\bf ten point boldface}
\bye

\fiverm, \sevenrm, \tenrm(\rm) を指定すると 実際には cmr5, cmr7, cmr10 のフォントが使われます。 他にも cmr6, cmr8, cmr9, cmr12, cmr17 のようなフォントが用意されていますが、これらを使用するには、 あらかじめ自分でそのためのコマンドを用意する必要があります:

tex003d.tex(S-JIS) -- tex003d.dvi
\font\eightrm=cmr8
\font\twelverm=cmr12
\font\seventeenrm=cmr17

{\eightrm eight point roman}
{\twelverm twelve point roman}
{\seventeenrm seventeen point roman}

\bye

どのような名前のフォントがあるのかは A Gentle Introduction to TeXのp.18の表を 見て下さい。

文書すべてを標準より拡大された文字で出力することもできます。 入力ファイルの先頭で\magnification(拡大率)を指定します。 1000が標準で、1.2倍なら1200で指定します。

tex003e.tex(S-JIS) -- tex003e.dvi
\magnification=1440
\hsize=16truecm
\vsize=24.5truecm
\noindent
これは拡大率を1440(つまり1.44倍)にした文書です。
A4に印刷できるように {\tt hsize} と {\tt vsize} を単位 {truecm} で
指定しています。
\bye

特別な拡大率はコントロール・シークエンスを用いて表現できます: 1000のかわりに\magstep0、 1095のかわりに\magstephalf、 1200のかわりに\magstep1、 1440のかわりに\magstep2、 1728のかわりに\magstep3、 2074のかわりに\magstep4、 2488のかわりに\magstep5。 (これらの数値の意味はわかりますか?)

拡大は文書全体でなく、ひとつひとつのフォントにも適用可能です。

tex003f.tex(S-JIS) -- tex003f.dvi
\font\bmc=min10 scaled \magstephalf
\font\Bmc=goth10 scaled 4000
\font\bbf=cmbx10 scaled \magstep2
これは{\bmc ちょっと大きい明朝}と{\bbf  pretty large boldface font}と
{\Bmc すっごく大きいゴシック} の使用例です。
\bye

日常的によく使うフォントは自分専用のマクロファイルの中に 例えば次のように定義しておくと便利です:

fontdef.tex
\font \sssmc=min7
\font \ssmc=min8
\font \smc=min9
\font \bmc=min10 scaled \magstephalf
\font \bbmc=min10 scaled \magstep1
\font \bbbmc=min10 scaled \magstep2
\font \bbbbmc=min10 scaled \magstep3
\font \bbbbbmc=min10 scaled \magstep4

\font \sssgt=goth7
\font \ssgt=goth8
\font \sgt=goth9
\font \bgt=goth10 scaled \magstephalf
\font \bbgt=goth10 scaled \magstep1
\font \bbbgt=goth10 scaled \magstep2
\font \bbbbgt=goth10 scaled \magstep3
\font \bbbbbgt=goth10 scaled \magstep4

\font \sssrm=cmr7
\font \ssrm=cmr8
\font \srm=cmr9
\font \brm=cmr10 scaled \magstephalf
\font \bbrm=cmr10 scaled \magstep1
\font \bbbrm=cmr10 scaled \magstep2
\font \bbbbrm=cmr10 scaled \magstep3
\font \bbbbbrm=cmr10 scaled \magstep4

\font \sssbf=cmbx7
\font \ssbf=cmbx8
\font \sbf=cmbx9
\font \bbf=cmbx10 scaled \magstephalf
\font \bbbf=cmbx10 scaled \magstep1
\font \bbbbf=cmbx10 scaled \magstep2
\font \bbbbbf=cmbx10 scaled \magstep3
\font \bbbbbbf=cmbx10 scaled \magstep4

\font \sstt=cmtt8
\font \stt=cmtt9
\font \btt=cmtt10 scaled \magstephalf
\font \bbtt=cmtt10 scaled \magstep1
\font \bbbtt=cmtt10 scaled \magstep2
\font \bbbbtt=cmtt10 scaled \magstep3
\font \bbbbbtt=cmtt10 scaled \magstep4

\def\RR{{\bf R}}
\def\QQ{{\bf Q}}
\def\CC{{\bf C}}
\def\calA{{\cal A}}
\def\calB{{\cal B}}
\def\calC{{\cal C}}
\def\calD{{\cal D}}
\def\calE{{\cal E}}
\def\calF{{\cal F}}
\def\calG{{\cal G}}
\def\calH{{\cal H}}
\def\calI{{\cal I}}
\def\calJ{{\cal J}}
\def\calK{{\cal K}}
\def\calL{{\cal L}}
\def\calM{{\cal M}}
\def\calN{{\cal N}}
\def\calO{{\cal O}}
\def\calP{{\cal P}}
\def\calQ{{\cal Q}}
\def\calR{{\cal R}}
\def\calS{{\cal S}}
\def\calT{{\cal T}}
\def\calU{{\cal U}}
\def\calV{{\cal V}}
\def\calW{{\cal W}}
\def\calX{{\cal X}}
\def\calY{{\cal Y}}
\def\calZ{{\cal Z}}
\endinput

各フォントにどのような文字が収納されているのか調べるための texファイルがあります:fontbl.tex。 これを tex にかけると表示するフォント名や magnification を 聞いてくるのでそれに答えていけば、各フォントの表を作成してくれます。 cmss10 の magstep0 のものは次のようになります: fontbl.dvi
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