色々な距離空間や位相空間の作り方について学びます。
●部分空間
前回、距離空間の部分集合は自然に距離空間になることを学びました(部分距離空間)。
それでは、位相空間の部分集合は位相空間になるでしょうか?
定理:位相空間 (X, O) とその空でない部分集合 A が与えられたとき、
OA={A∩U | U∈O}
は A の上の位相を定める。
この位相を相対位相といい、位相空間 (A, OA) を
位相空間 (X, O) の部分空間といいます。
位相空間の部分集合が、部分空間としてコンパクトであるとき、コンパクトな
部分集合であるといいます。
問:ハウスドルフな位相空間のコンパクトな部分集合は必ず閉集合であることを示しなさい。
問:コンパクトな位相空間の閉集合は必ずコンパクトであることを示しなさい。
定理:f : (X,O) → (Y,O') が連続写像で、
AがXのコンパクトな部分集合であるとき、像 f(A) はコンパクトである。
定理:コンパクトな位相空間上の連続関数は必ず最大値・最小値を持つ。
定義:位相空間の間の写像 f : (X,
O) → (Y,
O') が次の3条件を満たすとき、
f は
同相写像であるという。
- f は全単射(つまり逆写像 f-1 が存在する)。
- f は連続。
- f-1 は連続。
そのような f が存在するとき、(X,
O) と (Y,
O') は
同相であるという。
問:コンパクトな位相空間からハウスドルフな位相空間への連続な全単射は
同相写像であることを示しなさい。
●関数の作る空間
距離空間 (X,d) 上の実数値連続関数の全体を C(X,d) と書くことにします。
この集合は必ずしも距離空間とはなりませんが、
次のように“距離関数もどき”を定めることにより、距離空間と似た空間になることがわかります。
δ(f, g) = sup{ |f(x)-g(x)| | x∈X }
ただし、右辺に現れる集合が上に有界でないときは、δ(f, g) = +∞ と考えます。
X がコンパクトの場合は、本当の距離空間になります。
C(X) の中の関数列 {fn} の上の距離関数(もどき)に関する収束は、いわゆる
一様収束です。
教科書の§12にはこの空間に関する色々な事項が解説してあります。
ぜひ一度目を通してみてください。
●商空間
(X,O) が位相空間であり、X の上の同値関係 〜 が与えられているとします。
念のために復習しておくと、同値関係とは X の上の関係で、次をみたすもののことです:
- x 〜 x (∀x∈X)
- x 〜 y => y 〜 x (∀x∈X, ∀y∈X)
- x 〜 y, y 〜 z => x 〜 z (∀x∈X, ∀y∈X, ∀z∈X)
x の属する同値類 [x] は次のように定義されました:
[x] = { y∈X | x 〜 y } (⊂ X).
同値類は次のような性質を持ちます:
- y∈[x] <=> x 〜 y
- [x]∩[y] ≠ φ => [x]=[y]
同値類の全体を X/〜 と書き、同値関係〜による商集合といいます。
X から商集合 X/〜 には自然な全射 π:X → X/〜 が π(x)=[x] で定まります。
逆に X から集合 Z への全射πがあれば、x 〜 y <=> π(x)=π(y) により同値関係が定まります。
X/〜には、次のように位相が定まります:
O'={π-1(U) | U ∈ O }
これを商位相といいます。
この位相に関してπは連続写像となります。
※ 距離空間に同値関係が与えられても、商集合には自然な距離関数が定まるとは限りません。